昔々、名医の華佗は河南で医業を行っていました。
ある日、彼は白家庄という村にたどり着きました。
激しい雨が降ってきたため、その日は村の宿屋に泊まることにしました。
宿の主人は姓を「白」と言いました。
深夜、華佗は子供の泣き声で目を覚ましました。
鳴き声に混じって咳の音も聞こえました。
華佗はすぐに起き上がり、宿の主人の所へ行きました。
「泣いているのは誰の子ですか?」
「この宿の後ろに住んでいる家族の子供です」
「その子は、おそらく明日の昼まで生きられないでしょう」
宿の主人は不快な表情をしました。
「あなたは、なぜ人の子を呪い殺そうとするのですか?」
主人は華佗を呪術師だと勘違いしていました。
「誤解を与えて申し訳ありません。私の名前は華佗といい、医者をしています。この咳は普通の咳ではありません。急いで診ないといけません」
宿の主人は華佗が医者だと知ると、すぐに態度を変えました。
急いで無礼を詫び、「あの子は何日も苦しんでいるのです。早く治療してあげてください!」と頼みました。
「案内してください」
宿の主人は華佗を連れて宿の後ろ向かい、家の戸を叩きました。
「医者を連れてきました! あなたの子供を治療させてください!」
家族は急いで華佗を中に招き入れました。
華佗は子供の顔色を視て、咳の音を聞き、脈を取り終えると、家族に告げました。
「この子の命を救うためには、ある薬草が必要です。すぐに見つけて服用すれば、この子は助かります!」
助かると聞いて、子供の父親は急いで華佗に尋ねました。
「どんな薬草ですか!? どこにありますか!?」
「灯篭を持ってきてください。私が探します」
「いや、そんなお手間はかけられません。それに、外は大雨です。 父親である私が行きます!」
「お気遣いは無用です。薬草を知っている私が探した方が早く見つけられます。立場は関係ありません。この子の命を救うのが最優先です。早く行きましょう!」
雨は激しさを増し、地面は泥水で満たされ、滑りやすく歩きにくくなっていました。
子供の父親が灯篭を持って先導し、華佗は村のあちこちを探し回りました。
必死に探し続けると、ようやく小川の土手で薬草が見つかりました。
華佗はそれを掘り起こし、根を切り、水で洗い、煎じて子供に服用しました。
そして、薬草の葉を子供の家族に手渡して言いました。
「これを見本にしてください。明日になったらもっとたくさん掘って、何回かに分けて服用させてください。そうすれば病気は完全に治るでしょう。これは咳を止め、痰を取り除く良薬なのです」
「分かりました! 本当にありがとうございます! さぁ、宿に戻って休んでください」
子供の家族は親切な華佗に休むよう促しました。
ところが、薬草の名前を尋ねることをすっかり忘れていました。
翌日、子供の父親はお礼の品を持って宿屋に行き、華佗に感謝を伝えようとしました。
「あの医者は、夜明け前に旅立ちました」
「なんてことだ! 彼にきちんと感謝することもできず、名前を尋ねることもできなかった……」
父親は強く後悔しました。
宿の主人が「彼が誰だったか知っていますか?」と尋ねてきました。
「誰ですか?」
「華佗です」
「あぁ! あの医術の高さ、心の優しさ、まさに生きる神様だったんですね!」
子供の父親は、華佗が残した葉を頼りに薬草を掘り、子供に服用させ続けました。
すると間もなく子供は完全に回復しました。
その後、華佗が用いた薬草に咳止め効果があるということは、多くの人に知れ渡りました。
でも、誰もその薬草の名前を知りませんでした。
そこで、皆で考えた結果、薬草が宿の主人である白家の家の前で最初に見つかったことから、「白前」と名付けました。
おしまい
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