昔、南方の極地に一羽の仙鶴がいました。
仙鶴は一株の薬草をくわえて人間界に持って行き、最良の地に植えるつもりでした。
仙鶴が天目山麓の上空に来ると、山に隣接して水辺があり、陽当たりがよく、風を避けられる盆地を見つけました。
仙鶴は降りてきて口にくわえた薬草を植えました。
仙鶴は日中に草を摘み土を耕し水をやり、夜は首を垂れてその横で守っていました。
日が経つにつれ、仙鶴は小さな山に変化していきました。
そしてその山は「鶴山(かくざん)」と呼ばれるようになりました。
ある年、鶴山の近くで疫病が発生し、多くの人が病床に伏せていました。
その日はちょうど九月の重陽節で、秋晴れの日でした。
街に白い服を着た一人の女性がやってきました。
白いスカートに菊花と朱砂が刺繍されていました。
彼女は白朮(びゃくじゅつ)を無料で病人に配っていました。
薬屋の主人が利益があると見て、すべての白朮を安値で買い取りました。
この白朮は、奇跡的な効果を発揮し、人々は次々と病魔から解放されました。
薬屋の主人は大金を稼ぎました。
彼は貪欲で、白朮の女性が鶴山に住んでいると知ると、山に入って探しました。
しかし、どこを探しても見つかりませんでした。
その様子を見ていた薬屋の主人の妻は、夫の耳元で何やらささやきました。
彼女の言葉を聞いた薬屋の主人は大喜びしました。
翌年の重陽節に、女性が再び白朮を持って街にやって来ました。
薬屋の主人はすかさず女性に声をかけ、「お茶でも飲んで行きなさい」と、とても親切に接しました。
薬屋の主人の妻は、女性が座ったところを見計らって、こっそりと針で赤い糸を女性のスカートに縫いつけました。
女性がお金を受け取って去ると、薬屋の主人は助手を連れてこっそりと後をつけました。
女性は荒れた小道を山坂に向かって歩いていき、歩いているうちに突然姿を消しました。
薬屋の主人と助手は急いで山中を探し回りました。
すると山腹で赤い糸を着けた白朮を見つけました。
薬屋の主人は大喜びで「見つけたぞ!」と叫びました。
彼は大声で助手に「早く早く! クワを持ってこい!」と言いました。
しかし、クワを打ち込むと「パチン」という音とともに、金色の光が閃き、薬屋の主人の目を貫きました。
彼はそのせいで盲目になりました。
白朮は跡形もなく消え去り、その後、女性も二度と姿を現しませんでした。
鶴山で産出される白朮は特に貴重で、切り開いてみると、朱砂のような点と、菊花のような雲の形が見られるそうです。
おしまい
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