古代の蜀国に、全身の骨が痛み、苦しんでいる大王がいました。
多くの医者が治療を試みましたが、どの治療も効果がありませんでした。
ある医者が、「風邪が原因だ」と考え、風邪を体外に排出すれば治ると提案しました。
そこで、大部屋に木製の桶を設置し、その中に薬草を入れて水を沸かし、大王に桶の中で蒸気浴をするよう指示しました。
しかし、火を焚いたことで部屋はすぐに煙でいっぱいになりました。
さらに、大王は下の火を見ると「これでは私が蒸し殺される!」と怒りました。
急いで桶から逃げ出すと、薪を焚べていた医者を殺しました。
大王はその後、病気を治せる者に金万両の褒美を約束すると、全国に布告しました。
一根針と呼ばれる医者が、大王の治療に応じました。
彼は、大王の痛みが「全身の筋脈の不通によるものである」と説明し、銀の針で筋脈を疏通させる治療を行いました。
しかし、首に針を刺そうとしたところ、大王は身の危険を感じて兵士に助けを求めました。
「こいつは私を暗殺しようとしているのではないか!?」
兵士はすぐさま剣を振るい、一根針は治療を完了する前に殺されてしまいました。
その後も同じようなことが続き、結局、9人の医者が大王を治療しようとして命を落としました。
他の医者たちは皆、怖れて山奥に隠れてしまいました。
川西に胡王の使者がいました。
彼は数年前に蜀国との友好関係を築こうとして、特産品を持って蜀国にやって来ました。
しかし、大王は彼をスパイと疑い、国に帰ることを禁じ、川西で労働させ、持参した特産品をそこで栽培させました。
大王が、全身の痛みを治せる医者を探していると知ると、彼は自分が栽培した植物を掘り起こし、大王のもとへ行きました。
大王は言いました。
「胡王の使者よ、我は治療に来た9人の医師を殺した。お前は本当に我の病気を治せるのか?」
「私があなたの病気を治せたら、金万両は要りません。その代わり故郷へ帰してください」
そう言うと、持参した薬草を煎じました。
自分が先に飲み、毒がないことを示した後、大王に飲ませました。
大王は数日間、その薬を飲み続けました。
すると、本当に全身の痛みがなくなったのです。
大王は胡王の使者を呼び、「我を治療した者たちの中で、そなたはただ一人生き残った(ただ一人生き残った=独活下来)。約束通り、故郷へ帰ることを許そう」と言いました。
大王は川西の人々に、胡王の使者がいなくなった後も、この薬草を栽培するよう命令しました。
そして、薬草に「独活草」と名付けました。
後に、人々は、胡王の使者が大王の病を治した話にちなんで、「独活」、または「大活」と呼ぶようになりました。
おしまい
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