祖父と孫の中医学物語 第五十二話 頭皮のふけと痒みに

中医学物語

ある若者がいた。

彼はあまり衛生に気を遣わず、だらしなく、こってりした食べ物を好んで食べ、夜食も欠かさない。

そのため顔は脂ぎっていて、陰部は湿って蒸れ、頭もいつもかゆくて、かけばかくほどふけがパラパラと、まるで雪のように落ちていた。

人々は彼に近づこうとせず、それがまた彼の悩みの種となっていた。

ついに彼は、ふけをなんとかしたいと茅葺の家を訪ねた。

「衛生は医者まかせにはできないよ。自分でやるものだ。薬でふけは洗い落とせても、君のだらしない習慣までは洗い流せない。習慣を変えない限り、ふけはいくらでも戻ってくる」

そう祖父に言われ、医者の力だけでは自分の問題は解決できないのだと気づいた。

治療三分、養生七分という言葉の意味をようやく理解した。

祖父は続けて言った。

「肉を控えて、野菜を多く食べなさい。このふけは“濁陰”のあらわれだ。濁陰が盛んすぎると、“清陽”が上に昇れず、濁陰も下に降りない。だから頭部全体に垢がたまるのだ。放っておくと脂肪も増え、いずれは髪も抜けてくるよ。そうなってからではもう遅い」

若者は「夜食はもうやめます」と力強く肯いた。

「それでいい。夜は人の消化力が最も弱まる時間だ。そこに夜食を詰め込めば、油脂は消化されず、体外に噴き出す。心は煩わされ、眠りも浅くなり、顔や頭に油がにじみ出る。食い意地を張ってもいいことはない。病と煩悩が増えるだけだよ」

すると指月がたずねた。

「祖父? 頭のふけを洗って痒みを止めるには、中医学ではどんな薬を使うのでしょうか?」

祖父は笑って答えた。

「中医学は“病”を見るのではない。“気血”と“昇降”を見る。清陽がちゃんと上がって、濁陰がきちんと下がっていれば、ふけなんぞ出るはずがないだろう? この若者のように、頭頂部のふけがひどくて痒みが強いときは、藁本を使って清陽を引き上げる。顔や頭全体が脂っぽく汚れているなら、白芷を加えて陽明経の通降機能を強化する。この二つを粉にして、寝る前に頭髪にふりかけ、翌朝、櫛で梳かせば、ふけも汚れも痒みも一緒に取れてしまうんだ。その上で、食事をあっさりとしたものにし、夜食を断てば、ふけや脂っぽさはもう現れてこないよ」

その後、若者は祖父の言う通りにして生活を見直した。

すると、三日も経たぬうちに、若者のふけは日を追うごとに減っていき、顔の脂も日に日に少なくなった。

特別な化粧品やシャンプーを使ったわけでもなく、ただ食事を整え、藁本白芷散を用いただけで、顔や頭の脂、ふけ、痒みといった症状はすっかり治まったのである。

後日、若者の症状が良くなったことを知った指月は、にっこり笑って言った。

「祖父、あの処方は本当に見事ですね。もともと藁本も白芷も“風薬”で、頭頂のような高いところにも届きます。“痒み”というのは泄風でみられます。風薬でこれを疏通して止痒するとは、なんと巧みなことでしょうか。さらに清陽が昇り、濁陰が降りれば、精神もすっきりして元気が出るってわけですね」

そして指月は、ノートにこう書き記した。


『便民図纂』より:
乾洗頭屑:藁本・白芷を等分にして末となし、夜間に髪の中にふりかけ、翌朝、櫛で梳けば、垢は自然と落ちる。


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