経脈(十四経)にはそれぞれ固有のツボがあり、「経穴」といいます。
経脈に属さないツボを奇穴といいます。
※1901年以降に発見された奇穴は「新穴」といいます。
身体に異常がある時にだけ現れるツボがあり、それを「阿是穴」といいます。
押したり、鍼を刺すと「あ〜そこそこ」と患者さんがいう場所で、「阿〜、是、是(あ〜、それそれ)」という中国語です。
全てのツボを合わせて「腧穴」といいます。
要穴
経穴は全部で361穴あります。
経穴がある経脈は各臓腑に繋がっています。
鍼灸師は経穴に鍼灸治療をして臓腑の治療を行うことが出来ます。
経穴は身体を治療する「治療点」であると同時に、身体の反応が現れる「診断点」でもあります。
そんな経穴の中でも、特に力を持った臨場上重要な経穴があります。
それを「要穴」といいます。
経穴の中のエリートです。
そんな経穴のエリート達は、その特徴からいくつかの要穴グループに分けられます。
- 五要穴(日本での通称)
- 五輸穴(日本では五兪穴)
- 五行穴(日本特有)
- 四総穴
- 八会穴
- 八脈交会穴(八総穴・八宗穴)
- 交会穴
- 下合穴
要穴は国家試験での出題量も多く、臨床でも重要なので必ず覚えてください。
今回は五要穴を学んでいきましょう。
五要穴
原穴・絡穴・郄穴・募穴・兪穴(背部兪穴)の5種類の要穴の総称です。
※五要穴という言葉は古典にはありません。
便宜上、5種類の要穴の総称として用いています。
原穴
原穴は、各経絡に1つずつあり、元気(原気)が集まるところです。
元気は腎精から作られます。
その後、丹田に集まり、三焦を通って五臓六腑や十二経脈に散布されます。
※三焦は六腑の一つで、中医学特有の臓腑です。三焦の中を元気と津液(水)が流れます。人体のガス管と水道管の様なものと考えてください。
※元気が集まる丹田は、臍の下(下腹部)にあり、そこには「気海」という経穴があります。
元気は活動のエネルギーです。
つまり、原穴は各臓腑が元気に活動できているかという状態が最もよく現れる所です。
原穴に刺鍼すると、三焦の元気を通じさせ、臓腑の機能を調整することができます。
臓腑の状態が現れるので、それを利用した診察を「原穴診」といいます。
例えば、肝の疾患では肝の原穴である太衝に圧痛がでやすく、太衝を取穴して治療することができます。
「困ったときはとりあえず原穴に刺せ」と言う先生がいましたが、当たらずとも遠からずだと思います、笑
郄穴
郄穴は原穴は、各経絡に1つずつあり、奇経八脈の陰維脈・陽維脈・陰蹻脈・陽蹻脈にも1つずつ、合計16穴あります。
これを「十六郄穴」といいます。
郄は「隙間」や「しりぞける」という意味があり、その名の通り郄穴は骨や筋肉の隙間にあり、悪いものを退ける力を持ちます。
そのため、臨床では「急性症状」に良い効果があります。
例えば、急な胸の痛みに心包経の郄門がよく使われています。
国家試験でも出題されたことがあるので、「郄穴は急性症状に用いられる」と覚えておきましょう。
絡穴
十二経脈に各一つずつと、脾経にもう1つ、督脈と任脈にも1つずつあり、合計15穴あります。
絡は「連絡」といいう意味です。
経脈から分かれ出て、表裏関係の経脈と連絡する脈を絡脈といいます。
※脾経にある「脾の大絡の絡脈」と督脈と任脈の絡脈は、表裏関係の経脈ではなく、頭部や胸腹部に伸びて、そのエリア全体に絡脈を分布させています。
絡脈は、イメージとしては「静脈」が近いです。
この経脈から絡脈が分かれ出る場所に絡穴があります。
絡穴は表裏関係の経脈を同時に治療することができます。
2つの経絡の気血の通りを同時に良くするため、「最も「疏通経絡(経絡の気血を通す)の力が強い要穴」です。
例えば、脾胃の病気であれば、脾経の公孫で脾と胃の両方を治療することができます。
他にも、「慢性症状」に良い効果があります。
国家試験でも出題されたことがあるので、「絡穴は慢性症状に用いられる」と覚えておきましょう。
募穴
募穴は胸腹部(陰側)にある、臓腑の気が多く集まるところです。
募穴は臓腑にそれぞれ1つずつありますが、必ずしも自分の経脈上にあるわけではなく、任脈や他の経絡に存在するものもあります。
場所はおおよそ臓腑の位置に一致しています。
臨床では診断点や治療点としても有効で、胃の疾患であれば中脘穴(臍の上4寸にあり解剖学的にも胃と一致している)に反応が現れ、そのまま治療穴として取穴できます。
募穴は単独で使用することもりますが、次に紹介する兪穴と合わせて「兪募配穴」として使用することもあります。
兪穴(背部兪穴)
兪穴は背部(陽側)にある、臓腑の気が注ぐところで、全て足太陽膀胱経上にあります。
臓腑にそれぞれ1つずつあり、心包の兪穴である厥陰兪以外は臓腑名と同じ名前が付いています。
背部兪穴の分布も、それぞれの臓腑の位置とおおよそ一致しているので、相応する臓腑の疾患を治療することができます。
兪穴も募穴と同じ様に、診断にも治療にも使えます。
単独で使用することもあれば、募穴と合わせて「兪募配穴」として使うこともあります。
「兪穴と募穴の使い分けが分からない」という学生も多いので、いくつかご紹介します。
ぜひ、参考にしてください。
- 五臓(陰)の病には兪穴(陽)を使い、六腑(陽)の病には募穴(陰)を使う。
- 急性病には募穴を使い、慢性病には兪穴を使う。
- 実証には募穴を使い、虚証には兪穴を使う。
慢性病の多くは虚証で五臓が弱っています。
五臓の病は兪穴を使います。
なので、慢性病では兪穴を使います。
中医基礎理論で陰陽や五臓の事を学ぶとより理解しやすくなりますよ。
表記の注意事項
原穴・兪穴・募穴は「臓腑」の気が集まる場所なので、「肺経の〜」ではなく、「肺の原穴」、「肺の兪穴」、「肺の募穴」といいます。
郄穴は「経脈」の気が集まる所で、絡穴は「経脈」から絡脈が分かれ出る所なので、「肺の〜」ではなく、「肺経の郄穴」、「肺経の絡穴」といいます。
間違えやすいので気をつけましょう。
原穴にはみんなが感じる謎がある
原穴を学ぶと、みんなが感じる謎があります。
原穴は十二経絡に1つずつあります。
陽経は原穴が単体でありますが、陰経は五輸穴の輸穴が原穴を兼ねています。
何故でしょうか?
この謎の答えは、次回お伝えします。
お楽しみに♪