※登場人物の2人がどちらも「一方の秀才」という呼び方で表現され分かりにくいので、「秀才A」と「秀才B」と表記しています。
ある夏の日、二人の秀才(科挙の最初の試験に合格して府・州・県の学校で学ぶ者)が都へ試験を受けに行きました。
彼らは試験に間に合うよう、急ぎ休まず旅を続けたため、体は疲れ果て息も絶え絶えでした。
その日、彼らは休むための村も、お店も見つけられずにいました。
歩き続けると、一面の荒野に辿り着きました。
二人は激しい渇きと飢えを感じてフラフラしていましたが、周囲に休めるような場所はありませんでした。
そんな中、秀才Aが疲労と熱さで体内の熱が上昇したためか、鼻血が止まらなくなりました。
秀才Bは急いで持っていた古い書籍を裂き、小さく丸めて友人の鼻に詰めました。
しかし、鼻を塞いでも血は止まらず、口から溢れ出してしまいました。
「どうすればいいんだ!」
困り果てた秀才Bは頭を抱えました。
「水が飲みたい……少しでもあればいいのに……」
「こんな荒野のどこに水があるというんだ!」
「せめて何か湿ったものでも口に入れれば……もっと楽になるのに……」
「見てみろよ。周りには黄色い砂しかない」
そのとき、サーっと仙鶴が彼らの頭上を飛んでいきました。
口と鼻から血を流しながら、秀才Aは羨望のまなざしで仙鶴を見上げ、両腕を広げ叫びました。
「待ってくれ! 私に翼を貸してくれ! 私をこの地獄から飛び出させてくれっ!!」
大きな声に驚いたのか、仙鶴は嘴を開き、くわえていた野草を落としました。
秀才Bは笑いながらそれを拾い上げて言いました。
「翼は借りられなかったけど、まずはこれで喉を潤してみよう」
秀才Aはその野草を口に含み咀嚼し始めました。
不思議なことに、少し噛んだだけで流れていた血が止まったのです。
二人は大喜びしました。
「ハハッ! 仙鶴が薬を届けてくれたよ!」
その後、二人は何とか試験の期限に間に合い、受験することができました。
そして、無事に合格しました。
数年後、二人は別々の場所で官職に就いていました。
ある日、二人は久しぶりに再会しました。
そして、砂浜での出来事を思い出し、止血効果のあるその薬草を再び見つけたいと思いました。
しかし、多くの医者に尋ねても、その薬草を知る者はいませんでした。
二人は薬草を絵に描き、それを見せながら探すことにしました。
何年間も探し続け、ついに薬草を見つけることができました。
その薬草は、羽のような葉を持ち、秋に白い花を咲かせる植物で、止血効果を持っていました。
二人は薬草を届けてくれた仙鶴を記念して、その植物を「仙鶴草」と名付けました。
おしまい
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