【中薬を故事で学ぶ】 知母の故事 〜心優しい木こりと母の物語〜

中薬の故事

昔々、一人の老婆がいました。

彼女は孤独でした。

子供はおらず、若いころから薬草を採取して生計を立てていました。

お金に興味がなく、貧しい病人に無料で薬草を提供していたため、貯金はほとんどありませんでした。

歳をとり体力がなくなり、山に登って薬草を採取すことができなくなると、村を回って物乞いをするようになりました。

そんな彼女には一つ心配事がありました。

(自分が死ねば、自分の薬草の知識を誰にも伝えることができなくなる。そうなったら誰が村人たちの治療するのか……)

彼女は決心しました。

(私のことを母と認める者に、薬草の知識を教えよう)

しばらくして、ある貴族がそのことを知りました。

(もし治療の知識を学べば、官僚に取り入る方法が一つ増えるな)

貴族は老婆を屋敷に招きました。

「おばあさん、私はあなたの子になる覚悟があります。早く治療に使える薬草を教えてください!」

彼女は貴族を一瞥すると、「急がなくてもいい。まず、私の子として私にどう接するかを見てからだ」と言いました。

貴族はすぐに使用人に部屋を用意させ、新しい服を与え、おいしい食事を食べさせました。

しかし、十数日が経っても老婆は薬草のことを言い出しませんでした。

貴族は我慢できず、「母さん!」と呼びかけ、「さあ、私に薬を教えてくれ!」と言いました。

「時期がまだ早い」

「いつまで待つべきなのだ?」

「10年くらい待たないとね。」

貴族は怒って飛び上がりました。

「まさか! 私はあなたを10年も養わなきゃならないのか? もういい! とっとと出ていけ!」

彼女は冷笑すると、元の破れた服を着て、静かに貴族の家を出て行きました。

彼女は街を歩きながら物乞いをし、「誰か私の子供になりませんか?」と呟いていました。

ある日、一人の商人がそれを耳にしました。

(老婆から知識を学び、薬を作って売れば儲かるはずだ!)

商人は彼女を呼び止め、「私はあなたを母と認める覚悟があります!」と言いました。

彼女は商人の家に住むことになりました。

商人は彼女を1か月間、美味しい食事でもてなしました。

そして商人は彼女に聞きました。

「あなたは本当に色んな薬草を知っているのか?」

「もちろん知っているよ」

「そろそろいいだろう? 教えてくれ」

「今はまだ時期ではない」

「どれくらい待たないといけないんだ?」

「私が死ぬ間際までかな……」

商人は怒りで震えました。

「ババア! 私をからかっているのか! もういい、さっさ消え失せろ!」

「あなたが私を呼び寄せたんでしょう?」

「ふん! 私が見込み違いをしたということだ!」

彼女は再び家を追い出されました。

村に戻り、また物乞いをしながら「誰か私の子になりませんか?」と呟きました。

長い時間が経ちました。

村の人々はすっかり彼女を狂人としてみていました。

もはや誰も彼女に関わりませんでした。

ある年の冬、彼女は小さな村にたどり着きました。

そして、ある家の前で滑って転んでしまったのです。

すると家から一人の男が出てきました。

男はその家の主人で木こりでした。

「おばあさん、ケガはありませんか?」

「ケガはありません。ただお腹が空いているだけです」

彼は彼女を家の中に案内すると、急いで嫁におかゆを炊かせました。

「家においしいものはありませんが、せめておかゆだけでも熱いうちに飲んでください」

彼女はおかゆを食べると体が温まりました。

「ありがとうございます。 おかげさまで助かりました」

そう言うと立ち上がり家を出ようとしました。

「ちょっと待ってください! こんな寒い日に、どこへ行くのですか?」

「どこでもいいので歩き回らなければ。物乞いをしなければ生きていけないのですから」

夫婦は老婆に同情しました。

木こりは「あなたの歳で物乞いは大変でしょう。我々は貧乏だが、それでも良ければ我々と一緒に住んでみませんか?」と言いました。

彼女は木こりの家に住むことにしました。

月日は流れ、あっという間に春が来ました。

ある日、彼女は木こりに言いました。

「このままずっとあなたにご飯を食べさせてもらい続けるのは良くない。だから私は出ていきます」

木こりはすぐに引き留めました。

「出ていかないでください! あなたには子供がいない。私たちには親がいない。このまま一緒に家族として過ごすのはどうだろう?」

彼女はため息をついて言いました。

「私は昔、薬草を採取していたので、多くの薬草を知っています。実を言うと、私は自分を母として受け入れてくれる人を探していました。私を母として受け入れてくれた人に、その知識を伝えるつもりでした。でも、もう無理なんです。私は歳をとりすぎました。薬草も見分けがつかなくなりました。あなたが私を養ってくれるのは嬉しいが、私はあなたにお返しするものがありません」

「何も返す必要はありません。とにかく我々には食べるものがあるから、あなたは物乞いに戻らなくてもいい。お願いです。ここを去らないでください!」

「私はここを家とし、あなたを子供と思っても良いのですか?」

「もちろん!」

それ以来、木こりと嫁は彼女を母として受け入れました。

彼女は嫁の手伝いをしたり、子供の面倒を見たり、家事を手伝ったりしました。

嫁も彼女を大切に思い、暑い時期は外の仕事をさせず、寒い時期には洗濯をさせませんでした。

彼女はそれから3年間、穏やかな日々を過ごしました。

夏が来て、彼女は90歳になりました。

ある日、彼女は木こりに言いました。

「山に行ってみたい」

「母さん、もう歳だから、無理しないでくれ」

「暇なのよ。山を歩き回ってみたいの」

「じゃあ、私が背負って連れて行ってあげるよ」

木こりは彼女を背負って山に登りました。

彼女は西へ東へと行きたがり、木こりは汗だくになりながら歩きまわりました。

それでも、木こりは文句を言わず、彼女を楽しませるために面白い話をし続けました。

二人が野草が生い茂る山の斜面に来たとき、彼女は木こりに立ち止まるように言いました。

彼女は木こりの背中から降りて一つの石に座り、線状の葉と白と紫色の模様の花を咲かせる野草を指しました。

「それを掘ってみて」と彼女は言いました。

木こりは土をかき分け、黄褐色の根を掘り出しました。

「母さん、これは何だい?」

「これは薬草だよ。この根は肺熱による咳や、虚労による発熱などの病気に効くわ」

続けてこう尋ねました。

「なぜ今まで私があなたにこれを教えなかったのかわかる?」

木こりは彼女の思いを悟っていました。

「薬を悪意のある人々に悪用されることを恐れていたんでしょう?」

彼女は笑って言いました。

「私は何年も探し続けたわ。でもずっと、心に留まる人にはめぐり合えなかった。あなたは私の気持ちをとても良く知っている。決めたわ。この薬草を『知母』と名付けましょう!」

その後、彼女は木こりに他にも多くの薬草を教えました。

その後、木こりは薬草を採取することを仕事にしました。

そして、母の言葉をずっと心に留め、母のように貧しい人々のために働き続けました。

おしまい


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