【中薬を故事で学ぶ】 蒼朮の故事 〜蒼朮の奇跡と小尼姑の新たな道〜

中薬の故事

昔々、茅山の観音庵に病気を治すことができる老尼姑(老尼姑:尼僧の中で最も年長の尼僧)がいました。

彼女はとても草薬に詳しいことで有名でした。

村人だけではなく、別の村の人も病気になると、老尼姑に助けを求めに来ました。

老尼姑は、薬草に通じていましたが、自分で薬草を採ることはしませんでした。

薬草の採取は小尼姑(若い尼姑)に任せていたのです。

小尼姑は毎日、老尼姑の指示に従って山で薬草を採取していましたが、どの薬草が何の病気に効くかはまったく知りませんでした。

老尼姑は金儲けが好きで、患者が払う金額に応じて薬を与えていました。

貧しい患者には、ただの野草を薬だと偽って与えていました。

小尼姑は不公平だと感じましたが、自分が薬を理解していないため、ただ何も言えず見ているだけでした。

ある日、村の貧しい男性が薬を求めにやって来ました。

「父の病を治療してほしいのです」

彼は一文も持っていませんでした。

老尼姑は薬も与えず、彼を追い払いました。

それを見ていた小尼姑は激しい怒りを感じました。

小尼姑はこっそりと白い花の薬草を一握り掴み、庵の外まで男性を追いかけました。

「これを持って帰って飲んでみてください」

患者は「ありがとうございます!」とお礼を告げて帰って行きました。

(病気が良くなるといいな)

しかし、小尼姑は急に不安に襲われました。

(あの人のお父様は何の病気だったんだろう? あげた薬草で病気は治るのかな? むしろ悪影響を及ぼすんじゃないかしら……)

数日後、小尼姑が薬草を渡した男性が観音庵にやってきました。

「先日はありがとうございました! いただいた薬草のおかげで、父が長年患っていた脚の弛緩性麻痺が改善しました」

老尼姑は非常に驚きました。

そんな効果を持つ薬草は、庵には無いからです。

彼女は小尼姑に尋ねました。

「あんたはあの男に何の薬草を渡したんだい? さっさと言いなさい!」

実は、小尼姑が男性に渡した白い花は「蒼朮」という薬草でした。

それは老尼姑に指示されて採取したものではなく、うっかり篭に紛れ込んでしまったもので、老尼姑は「使えない」と捨てた野草でした。

小尼姑は、蒼朮が病気を治す効果がある野草だということを知りました。

しばらくして、小尼姑は老尼姑の嫌がらせに我慢できず、観音庵を脱走して俗人に戻りました。

彼女は生計を立てるために蒼朮を採取し、弛緩性麻痺の患者をたくさん治療しました。

彼女はその後、蒼朮が嘔吐や下痢など他の病気も治療することができると知りました。

おしまい


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