【中薬を故事で学ぶ】 柴胡の故事 〜内容的に「柴慢」と名付けて欲しかった薬草〜

中薬の故事

昔、中国の地方に胡進士という人がいました。

胡進士の家には「二慢」という名前の長工がいました。
※長工:常雇いの作男(長期間雇われて耕作する男)

ある秋の日、二慢は「寒熱往来」の症状を呈す疫病にかかりました。
*寒気と発熱が交互にやってくる病状

胡進士は二慢が働けなくなることや、その病気が家族に感染することを危惧し、「二慢、もはやお前は必要ない。去るがよい」と彼を追い出しました。

二慢は哀願しました。

「私には帰る家も友もないのです。こんなに病んだ状態でどこへ行けばいいのでしょうか?」

胡進士は冷たく言い放ちました。

「私には関係ない! 君が1日働いたら、私は1日食事を提供する。働けないのなら、お前を養う理由がないのだ」

「何年もあなたに忠実に仕えてきました。どうしてこんなに冷たくするのですか!」と二慢は怒りを露にして叫びました。

周りの労働者がこのやり取りを聞いて動揺しないよう、胡進士は急いで二慢に金を渡し、「病気が治ったら戻って来い」と言いました。

二慢は仕方なく金を受け取り、家を後にしました。

彼は寒気がしたかと思うと、今度は熱くなるという不思議な症状に困惑していました。

その上、両脚が痛むので歩くのもままなりませんでした。

彼は池のそばに辿り着くと雑草の中に横たわり、一日中そこで過ごしました。

喉の渇きと空腹に苦しむ中で、何とか力を振り絞って近くに生えている草の根を掘って食べました。

そうして7日間、彼はその場所を動かずに草の根を食べ続けて過ごしました。

7日後、不思議なことに体に力が戻ってきたのです。

彼は元気を取り戻したので、胡進士の家に戻りました。

胡進士は二慢を見るなり、眉をひそめて言いました。

「どうして戻ってきたんだ?」

「病気が治ったら戻ってこいと言ってくれたじゃないですか?」

「病気は完全に良くなったのか?」

「はい。なので、これから仕事に戻ります」

二慢はそう言い終わると、クワを担いで畑に向かいました。

胡進士は驚き、困惑しつつも二慢を受け入れました。

二慢は以前と変わらず働き、それ以降は病気にかからなくなりました。

数日後、胡進士の息子が病に倒れました。

寒くなったり熱くなったりする症状は、まさに二慢の病と同じでした。

胡進士には子供はこの息子しかおらず、とても心を痛めました。

多くの医者に診せましたが、誰も治すことができませんでした。 

そんな中、胡進士は二慢のことを思い出し、彼を呼び寄せて尋ねました。

「息子がお前と同じ病気になったのだ。医者に診せても誰も治せない。以前、お前が病気になったとき、何の薬を飲んで治したのだ?」

「私は薬を飲んでません」

胡進士は驚きました。

「薬を飲まないでどうやって治したのだ?」

「自然に治ったんです」

二慢は本当のことを話していましたが胡進士は信じませんでした。

「薬なしで治るものか! 何か食べたんだろう? さっさと教えろ!」

彼は薬を飲んでいませんが、池のそばに生えていた草の根について話しました。

「この家を離れた後、村の外にある池のそばに辿り着き、そこで倒れました。その時、私はお腹が空いたので、その場に生えていた草の根を掘って食べました」

胡進士は「何の草の根を食べた? 早くそこに連れて行って教えてくれ!」というと、二慢の返事も待たず彼を連れ出しました。

二慢は胡進士を池のそばに案内しました。

彼は食べていた草の根を抜いて、それを胡進士に渡しました。

胡進士は急いで家に戻り、その根をきれいに洗い、煎じて息子に飲ませました。

数日間、息子にこの「薬」だけを与えました。

すると、無事に息子も回復したのです。

胡進士は非常に喜びました。

そして、胡進士はこの草に感謝の気持ちを込めて、名前を付けたいと思いました。

彼は考えた末、この植物は元々、薪(柴焼)として燃やされていたものであり、自分の姓が胡であることから、「柴胡」と名付けました。

(そこは柴慢でしょ!!←筆者ツッコミ)

おしまい


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