昔、ある家の娘が乳腺炎にかかりました。赤く腫れて痛みが強く、苦しみながらも羞恥心から口に出せずにじっと耐えていました。ある日彼女の母親が娘の異変に気付きました。しかし、母親は嫁入り前の娘がふしだらな行いをしたと誤解し、「恥を知らない者だけがこんな見苦しい病にかかるのよ。父母の面子を潰さないで!」と叱りつけました。娘は母の言葉の意味に気付き、恥ずかしさと怒りでいっぱいになりました。そこで、深夜にこっそりと川辺に行き、清白を証明するために川に身を投げました。その時偶然、川辺に蒲姓の漁師と彼の娘がいました。彼らは月明かりの下で網を張って魚を捕っていました。誰かが川に飛び込むのを見て、漁師の娘は命を顧みずに川に飛び込み、その娘を救いました。飛び込んだ理由を聞かれ、娘は乳腺炎のことを彼らに打ち明けました。漁師は少し考えた後、娘に向かって「明日、山に行って彼女に薬草を採って来てやれ。」と言いました。 翌日、漁師の娘は漁師の指示に従い、鋸歯状の長い葉と白い綿の球のような花を咲かせる野草を山で採取しました。その草を毎日煎じて娘に飲ませたところ、しばらくして乳腺炎が完全に治りました。娘の家族は、娘が川に身を投げたと聞きいて驚きました。そして、娘を誤解していたことに気付き、急いで人を派遣して娘を探させました。川辺の漁船で娘が無事に救助され、体調も回復していることを知り、大変安堵しました。娘は命の恩人である漁師の親子に涙を流して別れを告げました。漁師は彼女に残りの薬草を持って帰るように言い、もし病気が再発したら煎じて飲むように指示しました。 帰宅後、娘はその薬草を自宅の庭に植えました。 漁師の姓が蒲で、尊敬を込めて蒲公と呼ばれていました。そして、娘の名前は英子でした。命の恩人を記憶に留めるために、娘はこの薬草に「蒲公英」と名付けました。それ以来、この「蒲公英」という薬草が乳腺炎に対して効果があることが広く知られるようになりました。おしまい#蒲公英の故事