昔々、兵士になった兄が家を離れ、家に残された2人の姉妹がいました。
姉の名前は佩蘭(ペイラン)で、妹の名前は霍香(フォーシャン)といいました。
佩蘭は妹をとても可愛がり、霍香はそんな優しい姉が大好きでした。
「兄さん、早く帰ってくるといいわね」
2人は同じ願いを持ちながら、毎日一緒に田畑で働き、家事も協力してこなしました。
兄がいない寂しさはありましたが、二人は一度もケンカをすることなく、幸せな日々を過ごしていました。
ある夏の日、佩蘭が熱中症になりました。
頭痛、めまい、動悸、吐き気などの症状が現れました。
霍香は急いで佩蘭を布団に寝かせました。
「兄さんが家にいるとき、暑さを和らげる薬草を2種類教えてもらったの。山で採ってきて、あなたに飲ませるわ」
佩蘭は不安でした。
「17、8歳の女の子が一人で山に行くなんて危ないわ」
霍香は佩蘭によくなってもらいたかったので、「大丈夫よ」と言い、兄の古い服を着て男装し、山に向かいました。
佩蘭は霍香に何かあったらと思うと心配で仕方がありませんでした。
「早く帰ってきて欲しい」との思いで、家の戸をずっと見つめていました。
暗くなってきても霍香は帰ってきません。
完全に日が落ちて暗くなった時、ようやく霍香は帰ってきました。
佩蘭は霍香をみると凍りつきました。
霍香は視線が硬直し、手足は力を失い、玄関に入るとすぐに倒れこんでしまったのです。
佩蘭は、急いで霍香のもとに駆け寄りました。
「霍香! どうしたの?」
霍香は力なく答えました。
「毒蛇に……噛まれたの」
佩蘭は血の気が引く思いでした。
「どこを噛まれたの?」
霍香は脚を指しました。
佩蘭は急いで霍香の靴と靴下を脱がしました。
霍香の足は赤く腫れ、ふくらはぎまで赤く腫れあがっていました。
(ああ! これはひどい! 一刻も早く毒を搾り出さないといけないわ!)
佩蘭は霍香の足の傷口から毒を吸い出しました。
霍香は泣きながら言いました。
「やめて! 佩蘭も中毒になるかもしれないよ!」
佩蘭は霍香をしっかりと見つめて言いました。
「死ぬなら一緒に死ぬし、生きるなら一緒に生きる! 霍香がいなくなったら、一人で生きる意味なんてない!」
翌日、村人は2人が地面に横たわっているのを発見しました。
急いで助けようとしましたが、霍香は既に亡くなっていて、佩蘭も虫の息でした。
佩蘭は近くに置いてあったカゴから2つの薬草を取り出しました。
「皆さん。妹が採ってきたこの薬草は、我が一族に代々伝わる暑さを治療する薬です。でも、名前はありません。この丸い葉で太い茎のものは、暑さと湿気を取り、頭痛、発熱、腹膨満、胸悶を治療し、吐き気と下痢を止めることができます。これを『霍香』と名付けます。尖った葉と細い茎のものは、暑さと湿気の暑湿内阻、頭痛、めまい、嘔吐を治療します。これを『佩蘭』と名付けます。どうか、後世に伝えてください……」
そう言い終わると、佩蘭も息を引き取りました。
村の人々は深い悲しみに包まれました。
その後、村人たちは2人を埋葬した後、霍香と佩蘭を栽培し始めました。
人々は霍香と佩蘭、この2つの薬草を見るたびに、あの仲が良い素晴らしい姉妹を思い出したのでした。
おしまい
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