祖父と孫の中医学物語 第三十七話 スカートと痛経

中医学物語

ある日、ひとりの婦人が、下腹部に刺すような痛みを訴えて茅葺の家を訪ねてきた。

ここ二、三か月、毎月の月経のたびに血の塊が混じり、激しい痛みに悩まされているという。

すでに三人の医師にかかっていた。

処方されるのは、どれも活血化瘀か疏肝理気、あるいは温経通脈の薬だった。

確かに服薬中は少し楽になるものの、薬を止めると再び痛みがぶり返した。

しまいには月経期間以外の日常にも痛みが現れるようになってしまった。

医師たちは口を揃えて言った。

「もしこれだけ薬を変えても良くならないとなると、子宮内に“積聚”と呼ばれる塊ができているかもしれません。普通の薬では取り除けないものです」

その言葉を聞いた婦人は、顔が真っ青になった。

――私はまだ若いのに、もしそれが悪性だったら?

――もし本当に子宮に問題があったら、子どもを産めない体になってしまうのでは……?

そうした不安と痛みが重なり、気がつけば、日々の暮らしも仕事もままならなくなっていた。

そして、すがるような思いで、茅葺の家の戸を叩いたのであった。

指月は脈を取りながら尋ねた。

「こんなに浮いて緊張しているのに、これまでの医者たちは、どうしてそんなに活血化瘀薬を処方したのでしょうか?」

祖父は穏やかに笑った。

「その処方が大きく間違っているというわけではないのだよ」

その言葉に、指月も婦人も困惑の色を浮かべた。

婦人が口を開いた。

「間違いがないなら、なぜ私の病はよくならないんですか?」

「この病はね、何人もの医者に薬を出してもらったところで、治るものではないんだ」

婦人はその言葉に驚愕した。

この先生にまでそう言われたら、もうどうしたらいいのか分からなかった。

祖父は静かに目を細めて言った。

「君たちは、どうやって病を治すかばかりに目を向けている。だが、どうやってこの病を得たのかを、一度も考えたことがないだろう?」

まさに、夢の中の人を一言で目覚めさせるような言葉だった。

婦人が恐る恐る尋ねた。

「では、私はどうしてこの病にかかったんでしょうか?」

祖父はすぐに問い返した。

「君はスカートを穿くようになって、どれくらいになる?」

指月はそのときまで、婦人がスカートを穿いていることにさえ気づいていなかった。

そしてまた、スカートと病気がどう関係あるのか見当もつかなかった。

婦人は少し恥ずかしげに答えた。

「私は昔からずっとスカートが好きなんです。たとえ寒くなってもスカートのほうがきれいだから、いつも穿いています」

祖父は、婦人がどう返答するかすでに予想していたようだった。

やはりね、とうなずいていた。

「実のところを言うとね、君のこの病は、下半身が長いこと冷えたことによるものだ」

婦人は驚いた。

「冷え……ですか? でも、それがどういうことか、よくわかりません……」

祖父は、以前診た患者のことを語り始めた。

「少し前にも、ある若者がいた。暑がりで、扇風機の風にあたるのが好きでね。毎晩、扇風機を抱えるようにして、朝まで風に当たり続けていた。最初のうちは平気だったが、そのうち風邪をひきやすくなり、頭痛も頻繁に起こるようになった。どんな薬を飲んでも一時的によくなって、またぶり返すの繰り返しだった。それで、家族に言って扇風機を片づけさせ、寝るときに直接風を受けないようにさせたんだ。すると、それからはめまいも頭痛も風邪もすっかり治まったんだ」

婦人は興味深そうに聞いていた。

「だがね、その若者はどうしても涼しさ求めてしまい、とうとう我慢できず、こう考えた。『全身に風を当てるのがダメなら、足に当てればいいじゃないか』と。それで、ある晩、扇風機の風を足元に向けて一晩中吹かせて寝てしまったんだ」

婦人は身を乗り出して尋ねた。

「で、どうなったんですか?」

そのとき、指月が話を引き取った。

「そのお兄さん、その後、よくお腹を痛がるようになって、また祖父に診てもらいに来たんです。祖父は最初に『頭に風を当てたか?』って聞いたけど、『いや、それはしてない』って。次に『足に風を当てたか?』って聞いたら、その人はうなずいたんです」

祖父はクククと笑いを堪えていた。

「扇風機を取り上げる――つまり、足元の冷えを取り除き、羌活を少し包んで服ませたところ、腹痛はたちまち治まった。つまり、足が長く冷気にさらされると、風寒を呼び込み、毛孔が収縮して腹部の痛みを引き起こすんだ。漁師や農夫みたいに、水に浸かって仕事をする人たちを見てごらん。彼らは足を水に漬けているだけなのに、腰が痛くなったり、腹痛に悩まされたりするだろう? これは、「水寒」が経絡に沿って、四肢の関節から膝を経て、臓腑へと伝わっていくからなんだ」

祖父の話を聞いた婦人は、安堵感からフウっとため息をついた。

「スカートをはかないようにすればいいんですね。それなら簡単です。すぐにズボンに替えます」

指月は羌活を数包、温めた酒で服むようにと言って婦人に手渡した。

服用してからは腹痛が起きることもなくなり、翌月の月経では血の塊もすっかり消えていた。

――病の原因を見つけることは、病を根本から断つ上で、十人の名医を探すよりも遥かに有益である。

これこそが、「現象の奥にある本質を見抜く医者」が、どんな平凡な草薬でも神のごとく効かせることのできる理由なのだった。

指月は、ノートにこう書き記した――


『神農本草経』にはこうある。
「羌活は風寒の積を主り、女子の疝瘕(さんか)を治し、痛みを止める。」

また『薬鑑』にはこう記されている。
「羌活は足の太陽経の君薬なり。気味は雄烈にして、大いに用あり。辛温発散にして、肌表の八風の邪を散じ、周身百節の痛みを理むるに善し。巨陽の肉腐の疽を排し、新旧の風湿の症を除く」

なぜスカートをはいて足を冷やすと、生理痛になるのか。
それは、太陽膀胱経が寒邪を受け、全身の肌表や毛穴が収縮するからである。

毛穴が閉じれば、月経の気血は滞り、流れが妨げられる。
その結果、「不通則痛」――通じざれば、すなわち痛む。

このようなとき、羌活を用いて毛孔を開き、浮いて締まった脈象をほぐしてやれば、腹中の瘀血は自然と流れ去り、痛経や腹痛はたちまち消えていくのである。


コメント

タイトルとURLをコピーしました