【中薬を故事で学ぶ】 益母草の故事 〜親孝行の奇跡〜

中薬の故事

昔々、ある所に、母親と息子が二人で住んでいました。

母親は出産後に患った病気が原因で体が弱ってしまいました。

貧しさで医者に診てもらうこともできなかったため、息子が成長して十代になっても、母親の体は良くなりませんでした。

息子は小さい頃から父親がおらず、母親が一人で育てました。

ある日、息子は糸を紡いでいる母親の姿を見て言いました。

「お母さん、もう無理しないで、医者に診てもらいましょう」

「ばかなこと言うんじゃない!」と母親は目に涙を浮かべながら言いました。

「うちには一食分の米もないのに、どこに医者に払うお金があるっていうの?」

「医者が無理なら、せめて薬を買って飲んでみましょう」

「もういいの。あなたももうすぐ大人になるし、私はその日一日を生きられればそれでいいの。無駄なお金を使わないで」

「そんなこと言わないでください! お母さんは僕のためにずっと苦労してきました。僕はお母さんに、これから先は人生を楽しんでほしいのです。まずは病気を治しましょう」

息子は薬草を扱う商人のもとへ行き、母親の病状を伝えました。

商人は二つの薬を売ってくれました。

母親にそれを飲ませると、十日間は症状が出ませんでした。

息子は再び商人のもとへ行き、「母の病気を完全に治すことはできますか?」と尋ねました。

「もちろんできますよ。でも、五百キロの米と十両の銀貨が必要です」

「そんな…」と息子は絶句しました。

「どうやってそんなに多くの米と銀を手に入れればいいのだろう……」

息子はあれこれ考えた末、商人に言いました。

「お金と米は何とかします。本当に治すことができるのですね?」

「もちろんできますよ」

「では、まず病気を治してください。母が治ったら、銀貨と米をお渡しします」

商人は心の中で「これだから子供は簡単だ。大きな額を提示しても、値切るということを知らない」と思い、得した気分でいました。

子供とはいえ、息子はしっかり者でした。

息子は商人が夜中に薬草を掘りに行くのを、こっそり尾行したのです。

商人は、掘り出した薬草の花と葉を川に投げ捨てていました。

その様子を見た息子は、商人がいなくなったのを確認すると、川に飛び込んで花と葉を拾い、土手の植物と比較しました。

彼は手のひらのような形の葉と、淡い赤や白い花を咲かせる薬草を見つけ、いくつか採取して家に持ち帰りました。

「一晩中どこに行っていたの!?」

母親は心配して怒っていました。

「お母さんのために薬を探しに行っていました」

翌日、商人が薬を届けに来ました。

息子は商人が持ってきた薬草と、自分で採取した薬草が同じものだと確認しました。

(同じ薬草だ。これで、今後は商人から薬草を買う必要はない)

それからは、息子は自分が採取した薬草を煎じて母親に飲ませました。

日に日に母親の病状は良くなりました。

数日後、商人が再び薬を届けに来た時、息子は笑顔で言いました。

「申し訳ありません! 約束した米と銀を用意できません。この薬は高すぎて、母には飲ませられません。前回飲んだ二つの薬の代金だけお支払いします。これからは薬を持ってこないでください」

商人は焦りました。

なんとか値段をまけて、息子に購入させようとしましたが、息子は「お金があれば病気を治せますが、お金がなければ仕方ありません。貧乏人にはどうしようもできません」と断りました。

商人は何も言えず、前回の薬の代金を受け取って去りました。

その後も、息子は薬草を採取しては、母親に煎じた薬を飲ませ続けました。

母親の病気はとうとう完治し、また畑仕事ができるようになりました。

(薬草のおかげで、母の病気が治った。そういえばこの薬草は何ていう名前なんだろう?)

息子はその薬草の名前を知りませんでした。

そこで、母親がその薬草の恩恵を受けたということを忘れないように「益母草」と名付けました。

おしまい


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