昔々、漢の時代に、名将として知られる馬武という武将がいました。
ある年の六月、天候不順で雨が降らず、田畑は酷い日照りに見舞われ、作物が全く育たない状態でした。
同じ時、馬武は珍しく敗北し、彼の軍は人気のない荒野まで後退しました。
兵士たちは食べ物も水も見つけられず、とても苦しい状態にありました。
多くの兵士や馬が飢えと渇きで死んでいきました。
生き残った兵士や馬も水不足のため、そのほとんどが「膀胱湿熱証」となりました。
腹が膨れ上がり、人も馬も血尿が出ていました。
馬武のもとには、三頭の馬と馬車を担当する馬夫がいました。
馬夫は、一日中馬の世話と馬車の整備をしていましたが、彼も3頭の馬も血尿症になってしまいました。
(私も馬ももうダメか……)
そう諦めかけたある朝、馬夫は3頭の馬が元気に回復していることに気付きました。
血尿も治っていたのです。
(何故だ? 自然に治るとは思えない。何か食べたんだろうか?)
馬夫は不思議に思いました。
よくよく辺りを観察してみると、馬車が停まっている場所の地面に、豚の耳の形をした野草が生えているのを見つけました。
食べた痕跡もあったことから、数日間、三頭の馬はこの野草を食べていたことが分かりました。
その瞬間、馬夫はひらめきました。
(この野草は「血尿」を治す効果があるんじゃないか!?)
そこで、彼は野草を抜き、それを煎じて飲んでみました。
何日か続けると、血尿はなくなり、彼の尿も正常になったのです。
馬夫は急いで馬武のテントに駆け込み報告しました。
「でかしたぞ」
馬武は大喜びしました。
急いで兵士に野草を煎じて飲ませ、馬にも同じように与えました。
数日後、全ての兵士と馬の「血尿」が治癒しました。
馬武は馬夫に尋ねました。
「病を治す豚の耳の草はどこに生えているのか?」
馬夫は馬武を外に連れて行き、「ご覧ください。馬車がある辺りに生えています」と答えました。
馬武は大笑いして言いました。
「なるほど! 馬車の前の草……『車前草』だ! いい名前だろう?」
こうして、この薬草は「車前草」と名付けられ、国全土に広まりました。
余談ですが、馬武は車前草と名付けましたこの薬草を、その見た目から「豚耳草」と呼ぶ人も少なくありません。
おしまい
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