昔々、天秀山という山のふもとに、多くの薬草が生えていました。
その中でも特に多かったのが「苦参(くじん)」という草でした。
ある年、大干ばつが起こり、人々は食べるものに困っていました。
ある男が飢えに耐えられず、苦参の根茎を食べてしまいました。
すると、男は中毒を起こし、息が苦しくなり、唾液が止まらず、最後には亡くなってしまいました。
家畜も同じように苦参を食べて中毒になり、汗をかき、けいれんして死んでしまうことがありました。
この出来事以来、人々は苦参をむやみに食べることをやめました。
少しだけを薬に使うことはありましたが、多くは薪として使われるようになりました。
天秀山のふもとの村に、張五という農民が住んでいました。
張五は他の人とは違い、苦参を刀で切らず、いつも根ごと引き抜いて家に持ち帰っていました。
彼は力が強く、苦参の根を引き抜くことができたのです。
張五は家に帰ると、苦参の茎の皮を剥ぎ、それで麻袋を編みました。
彼が編んだ麻袋はとても丈夫で長持ちしました。
この話を聞いた村の人々も、張五のように苦参を引き抜こうとしましたが、誰もできせんでした。
張五は麻袋を編む技術を教えましたが、苦参を引き抜く力は伝えることができませんでした。
苦参の根は地中に深く広がっていて、普通の人には引き抜くことができなかったのです。
人々は張五の力に感心し、苦参は「好漢抜(強者が引き抜く)」という新しい名前を付けました。
張五の話は村中に広まり、彼の強さは、今でも語り継がれています。
おしまい
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