【中医基礎理論 第5講】 中医学の特徴:整体観念② – 臓腑の中で心だけ月(肉づき)がない理由 –

中医基礎理論

整体観念は、

  1. 人体は一個の有機整体である
  2. 人と自然界は密接な連携をとる

この2つの内容で構成されていることを学びました。

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まずは、「人体は一個の有機整体である」を更に深く学んでいきましょう。

「人体は一個の有機整体である」の内容は大きく3つに分けることができます。

  1. 五大系統は心系統の主導の基にある:五臓一体観
  2. 心身は相関している:形神一体観
  3. 人体のすべての物質は共同である:精気神一体観

一つずつみていきましょう。

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この3つをおさえましょう

五大系統は心系統の主導の基にある

「五大系統は心系統の主導の基にある」は五臓一体観といいます。

五大系統とは、五臓(肝・心・脾・肺・腎)の系統です。

五臓は、それぞれをトップとした系統を有しています。

例えば肝の系統には、肝をトップに胆・筋・目・爪などが属します。

五臓のリーダーは心なので、心の系統が全ての系統を主導しています。

人体は国のようなもの

中医学で人体で最も重要なのは五臓です。

五臓を中心に人体は一つの組織構造をとっています。

古来中国では、人体は国の構造に例えられていました。

日本も内閣があり各省庁があって、その下に様々な役所があって国が形成されていますよね?

人体も同じです。

日本という国に置き換えれば、トップの内閣総理大臣が心で、内閣にあたるのが心の系統です。

そして、大臣(肝・脾・肺・腎)がいる各省庁が肝・脾・肺・腎それぞれの系統となります。
*正確ではありませんがイメージです。

様々な組織が集まって連携することで国が機能するように、五臓を中心とする五つの系統=五大系統が連携することで、人体は正常に機能しています。

五臓の役職

内閣総理大臣や財務大臣の様に、五臓にはそれぞれの役割から役職名が付けられています。

  • 肝は剛臓ともよばれ、強く暴れやすい特徴から「将軍の官」
  • 心は五臓のリーダーなので「君主の官」
  • 脾は飲食物を消化吸収する働きから、食料庫を意味する倉廩から「倉廩の官」※倉廩:そうりん
  • 肺は君主である心の傍で心を補佐する「相傅の官」※相傅:そうふ
  • 腎は生命を生み出す強さや、人体の陰陽を生み出す強さから「作強の官」※作強:さきょう

役職名は鍼灸国家試験でもよく出題されるので覚えておきましょう。

*ちなみに、組織のナンバー2は六腑で、それぞれ役職名があります(六腑の講義で学びます)。

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五臓をトップとする組織系統は「国」の構造と同じ

上の図をみてください。

例えば、腎系統であればナンバー2に膀胱がいて、腎の組織には骨や耳、足の少陰腎経が所属しています。
*それぞれの系統に何が所属しているかは五行学説で詳しく紹介します。

同じように、心・肝・脾・肺にもそれぞれ系統があり、連携して人体を機能させています。

一つの系統だけでは人体は機能しません。

リーダーの心系統のもと、五つの系統が相互に関係し協調することで人体が機能します。

これが五臓一体観の考えです。

なぜ心が特別?

心は五臓のリーダーで特別な存在です。

心が特別なのは、漢字を見れば分かります。

臓腑の中で心だけ「月:肉づき」がありません。

これは他の臓腑と違い、心は精神=ココロの機能を持っているからです。

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月と肉づきの違い

ココロは目に見えません。

もし、肉づきを付けてしまうと実体のある「内臓」になってしまいます。

心の働きが血液を送り出すポンプ機能だけなら、肉づきを付けて「内臓」としても問題ないのですが、それだと目に見えないココロの機能を表すことができません。

そこで、目に見えないココロの機能を持つ心の漢字だけ「肉づき」を付けないことで、目に見えないココロの働きを表現したのです。

ココロを重視している中医学

中医学では昔から「ココロが身体を支配している」と考えていました。

つまり、「ココロ」の機能を司る心が、身体=人体をも支配していると言えます。

こういった理由から中医学では、心は特別であり、人体の中心である五臓のリーダーになったのです。

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心って半分神なんです

それにしても古代中国人が、身体が健康であるにはココロも重要であるということに、二千年以上前から気がついていたのは凄いですね(西洋医学ではここ数十年)。

鍼灸は「ココロ」と「カラダ」の両方を治療できる素晴らしい医術です(自慢)。

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鍼灸師オススメです!

心身は相関している

形神一体観、または心身一元論ともいいます。

形はカラダ、神は精神=ココロを指します。

これはみなさんもご存知の通り、ココロとカラダは密接に繋がっているということです。

「落ち込むと食欲がなくなる」「身体が痛いとイライラする」などは、ココロとカラダが繋がっている表れです。

また、ココロだけでは喜怒哀楽の感情は表に出せません。

反対に、カラダだけでは何も起こりません。

まさに「生ける屍」という状態です。

ココロとカラダが合わさり協調して、初めて心身=人は機能します。

中医学で重要な五臓が働くにもココロの働きが必要不可欠です。

ココロが正常であれば五臓は正常に機能します。

反対に、五臓が正常に機能すれば、正常なココロが生まれます。

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精神には肉体が必要。肉体には精神が必要。

鍼灸は「ココロ」と「カラダ」の両方を治療できる素晴らしい医術です!←2回目、笑

ココロに関しては五臓や七情(七つの感情)を学ぶ時に詳しく解説します。

人体のすべての物質は共同である

精気神一体観ともいいます。

精(広義では血や津液も含まれる)・気・神は人体を構成する基本物質です。

人体を構成する物質といえば、タンパク質や脂質が思いつくかもしれません。

それらも働きは違えど、生命活動を維持するという同じ目的のために力を合わせて機能していますよね。

「共同」とは同じ目的のために協力して働いているという意味です。

精・気・神はそれぞれ固有の働きをしています(いずれかに不足が生じれば、互いに変化し補い合います)。

精・気・神はそれぞ働きが異なっていても、「人体を機能させる」という共通の目的のために、互いに協調して働いています。

これが精気神一体観の考えです。

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互いに補い合える関係。素敵です。

まとめ

「人体は一個の有機整体である」の内容は大きく3つに分けることだできます。

  1. 五大系統は心系統の主導の基にある:五臓一体観
  2. 心身は相関している:形神一体観
  3. 人体のすべての物質は共同である:精気神一体観

人体はあらゆるものが繋がり協調することで生命を維持しています。

この考えは、診断や治療を行う上での前提となります。

しっかりおさえておきましょう。

※五臓がそれぞれどう繋がっているかは「蔵象学説」で、形神や精気神がそれぞれどう繋がっているかは「人体を構成する基礎物質」で詳しく学びます。


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