昔々、ある裕福な家の息子が風湿病(リウマチ)になりました。
腰や膝が痛み、動くのも困難になり、何年も寝たきりの状態が続いていました。
多くの医者に診てもらいましたが、誰も治すことができませんでした。
富豪は、一人の医者から南山に薬草を育てる農夫がいるという話を聞き、その農夫に息子を診てもらうことにしました。
しかし、南山は富豪の家から20里も離れていました。
富豪は若者を派遣し、2日に1度、薬を取りに行かせました。
ところが、農夫から渡されたいくつかの薬草を試しても、富豪の息子の症状は改善されませんでした。
とうとう、冬になりました。
その年の冬は特に雪が多く、何日も降り続きました。
若者は雪の中、40里以上の距離を往復しなければなりませんでした。
ある日、寒さが厳しく、若者は寒さで震えていました。
ふと周囲を見渡すと、桑の木の穴から小さな枝が伸びているのを見つけました。
「あれは、富豪の息子が飲んでいる薬に似ているではないか。そうだ、彼は何を服薬しても改善されないのだから、あれを持って行って薬として差し上げることにしよう」
若者は木に登り、いくつか小さな枝を採取しました。
その後、彼は友人の家に寄って枝を切って整え、丁寧に紙で包みました。
「これでよし」
戻るまでにはまだ時間があったので、若者はそこでしばらく温まって、それから家に戻ることにしました。
「持って参りました」
「うむ。ご苦労だった」
富豪は中身が偽物とは気付かず、いつものように煎じ息子に飲ませました。
それかも若者は、2日ごとに桑の木から細い枝を採取しては、富豪に届けました。
冬が終わり、春になりました。
驚くべきことに、富豪の息子は劇的に回復したのです。
すぐに富豪は使いを出し、南山の農夫に改善の報告と、お礼の品を届けさせました。
この知らせを聞いて南山の農夫は非常に驚きました。
(冬の間、一度も薬を取りに来なかったのに、彼は何を飲んで良くなったんだ?)
農夫はその薬のことを知りたくて、富豪の下を訪ねました。
彼が富豪の家の門に到達すると、ちょうど若者と出くわしました。
若者は農夫が富豪に会ってしまうと嘘がバレ、自分は罰として棒で打たれるだろうと恐れました。
若者は農夫に頼みました。
「どうか富豪に話さないでください!」
農夫は笑って言いました。
「事情は分かったよ。でも教えてくれないか。彼に何を飲ませたんだい?」
若者は答えました。
「枝です」
農夫は驚いて尋ねました。
「枝だって? どの木の枝だい?」
「村の入り口にあるあの古い桑の木の枝です」
農夫は信じられませんでした。
「桑の木の枝が風湿病を治すなんて聞いたことがないよ! その場所に連れていってくれないか」
若者は農夫を桑の木に連れて行きました。
農夫は木に登ると、こんもりした小さな枝のかたまりを採取しました。
(試してみよう)
農夫はこの木の枝を使って実際に風湿病患者を治療すると、多くの症例で改善がみられたのです。
その後、人々はこの小さな枝が桑の木に寄生している様子から、「桑寄生(そうきせい)」という名前をつけました。
おしまい
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