【中医基礎理論 第25講】 - 陰陽学説 陰陽自和 – 陰陽法則の結果

中医基礎理論

前回の記事では、「陰陽転化」について学びました。

ポイントは3つあります。

  • 陰陽転化とは、陰陽の属性が特定の条件の下で逆の性質に変化する。
  • 転化が起きる条件のキーワードは、「重」「極」「甚」の3つ。
  • 陰陽転化は陰陽消長の結果であり、陰陽消長は陰陽転化の前提となる。

そして今回は、陰陽の法則6つ目にして最後の法則、「陰陽自和(いんようじわ)」を学んでいきましょう。

陰陽自和

陰陽自和とは、陰と陽が自動的に調和と安定状態を維持し、また回復する能力と傾向を指します。これは陰陽の本性、つまり本質的な性質を表しています。

「自」は「おのずから」を意味し、陰と陽が内在する相互作用によって「和」、すなわち調和を実現することを意味します。この陰陽自和のメカニズムは、これまで学んできた陰陽のさまざまな相互関係に基づいています。

陰と陽は性質こそ相反しますが、「互いに生み出す(互生)」「互いに変化する(互化)」「互いに制約し合う(互制)」「互いに作用し合う(互用)」といった関係を持っています。こうした相互作用が変化するなかで、陰と陽は相反しながらも、互いに助け合って成り立つ「相成」の関係となり、物事や現象の調和的な発展を支えているのです。

画像
いろいろあるけど、結局なかよし

この「陰陽自和」の考え方は、中国古代哲学における「和を以て貴しと為す(以和為貴)」という思想に由来しています。

『淮南子・氾論訓』には、「天地の気において、和よりも大きいものはない。和とは、陰陽が調和することを指す……陰陽が相互に接することで、和が成り立つ」と記されています。陰陽の調和と協調を重視することは、陰陽学説において非常に重要な思想なのです。

陰と陽の二つの気が調和することを「和」といい、この陰陽の気が相互に維持されてこそ、「和」の状態に達することができます。この「和」は、宇宙における最も基本的な原則でもあります。

陰陽自和とは、陰と陽の双方が互いに調和し、安定した状態を保っていることを意味します。これは、陰陽の調和によって成り立つ、相対的かつ動的な平衡状態のことです。

陰と陽は、「陰陽対立・制約」と「陰陽互根」を基盤として、一定の範囲内で「消長」し、一定の条件下で「転化」することで、そのバランスを自動的に調整しています。

この動的な平衡が維持されていると、自然界では気候が安定し、四季の寒暖が正常に移り変わります。人体では、生命活動が秩序立ち、調和が保たれるのです。

『素問・調経論』には、「陰陽匀平,以充其形。 九候若一,命曰平人。(陰陽が平衡を保って、以て其その身体を充みたし、九候(脈象)が一致するようであれば、なづけて平人(正常な人)と曰う。)」とあります。ここでいう「平人」とは、心身ともに調和のとれた正常な状態の人のことです。

陰と陽の二気には、自己調整の力があります。病気の過程でも、体内の陰陽が自動的に調和を回復することによって、病状が改善されるのです。

『傷寒論・辨太陽病脈証並治』には、「陰陽白和者,必自癒。(陰陽自和すれば、必ず自ずと治る。)」と記されています。つまり、陰陽の動的平衡が保たれていれば、身体は自然に治癒へと向かうということです。

逆に、このバランスが崩れて陰陽自和の力が失われてしまうと、自然界では異常気象が、人体では病気や死といった深刻な状態が現れることになります。

画像
自己調整能力を日頃から鍛えよう!養生で。

陰陽の六大法則のまとめ

陰陽の法則で学んできた6つの概念は、それぞれ異なる角度から陰陽の相互関係と運動の仕組みを説明しています。

  • 陰陽交感:陰陽の絶え間ない相互作用を表し、天地万物の生成の基盤です。
  • 陰陽対立・陰陽互根:陰陽が相反しつつも依存し合い、共に存在している関係を示します。
  • 陰陽消長・陰陽転化:陰陽対立と互根を前提として、量的変化(消長)と質的変化(転化)が生じます。これが物事の発展や変化の内在的な原動力です。
  • 陰陽自和:陰陽が相互に制約し合い、作用し合うことで自己調整が起こり、全体の調和と平衡を維持します。

こうしてみると、「陰陽交感」を基盤に、「対立・互根」、「消長・転化」、そして「自和」へと至るピラミッド構造になっていることが分かります。すべての法則が連動し、最終的に陰陽の調和という目的に向かっているのです。

これは、中医学における「整体観念」が、陰陽学説の中にも深く息づいていることを示しています。

画像
陰陽の法則もつながっている。整体観念です。

中医学は、陰陽学説を通じて物事を弁証的に捉え、生命活動の構造・病理・診断・治療・予防・養生・リハビリテーションなど、あらゆる面に応用しています。陰陽学説は、中医学理論体系の基盤そのものといえるのです。

まとめ

今回は「陰陽自和」について学びました。

ポイントは3つです。

  1. 陰陽自和とは、陰と陽が自動的に調和と安定状態を維持し、また回復する能力と傾向を示すものである。
  2. 陰陽の法則は、陰陽交感を基盤としたピラミッド構造になっている。
  3. 陰陽交感、対立、互根、消長、転化の法則を経た結果として、陰陽自和が成立する。

今回で、陰陽学説の学習はいったん完了です。

次回からは、陰陽学説が中医学にどのような影響を与えたのかを学んでいきます。


コメント

タイトルとURLをコピーしました